堕女帝10

戻る  トップに戻る

数日後
私のところに来る男は最早彼だけになっていた
どういう話がなされたのかは解らないが
あの日彼に抱かれてから、私は彼だけの情婦となることになっていた
メガネの奥の瞳は変わらず優しげな眼差しではあるが
そこに光る何かは間違いなく財閥という中で戦ってきた私には解る強い男のソレである

今日も彼に抱かれるために私はこうして足しげく通う
もはや契約とかそういう話は一切なされてなかった
発情していくのを感じる
衣服に手をかけたときふいに扉が開いた
鍵をかけ忘れていたかと焦りそちらを見ると
…カレがそこに立っていた
焦り不安恐怖様々な感情がグルグルと渦巻いていく
それを知ってか彼は私のフォローをするように話を合わせていた

さあ会長、まだまだ打ち合わせは終わってませんよ
彼氏…さんかな?君には申し訳無いけどお引取りを願いましょうか
悪いですねもう少し会長をお借りしますよ
そう言って彼の肩を抱くと柔らかい物腰ではあるものの
外へと促す
少し訝しげにしながらもカレは出て行った
その僅かな時間すら何故か苛立たしくもどかしい
発情した身体はいつのまにか汗だくとなり
濡れたシャツが絡みつく
この姿を…見られていたのか
あおりみれば今の自分は誰が見てもオカシイと感じるだろう
カレもそう思ったに違いない
慌ててカレを追おうとするがギュッと腕を掴まれる
私は思いもかけずに力強く握られた腕によろめいて彼の胸に収まっていた

私はあさはかであったと思う
この結果をみれば明らかだろう
だがそれでも後悔はしていなかった

失うものと同等以上に価値あるモノを手に入れているのだ
そう信じた
だがソレはインモラルな果実であるのには違い無かった
真実は未だ大切な彼には告げれない
だがそれすらも私にとって果実をより甘くするエッセンスにしていたのだろう
もはや言葉は不要とばかりに私は彼に抱かれていく

私が男性に依存をしていないと生きていけない女だと気づいたのはつい最近の事
それは親愛する父の死という形で気づかされた悲しいモノであったが
今またこうして男性に依存する事で安らぎを得てしまっている…

ゆかりや大切な彼に知られればきっとまた叱られるのだろう
だが得てしまった安らぎという揺り篭を自らの手で捨てることなど私には出来なかった

禁断とまではいかないにしろ私には愛するカレが居るのにも関わらず
、 こうして情事を繰り返す度に私の心はドンドンと身を委ねた男のモノへと変貌する
肌を重ねるという事…貞操を許すという事は思っていた以上の力をもっていた
密着する肌と肌、絡み合う汗と汗、男と繋がることは人本来が持っている太古から脈打つ愛の形だ

繋がり始めれば私は大切なはずだったカレの顔を思い浮かべず
恋人のように目の前の男と口付けを交わしあう
もう幾度目か判らないほどに膣内射精を繰り返した膣
甘えた声で彼の総てを受け入れていた

第一部完

戻る  トップに戻る