深雪っ…深雪ってば
なに朝からにやけてるんだよ?
またお兄ちゃんか?
むーホントみゆみゆのブラコンはビョーキだよ
え?聞きたいか?
いや結構!マジ勘弁してくれ
みゆみゆのお兄ちゃん自慢は長くなるからさ〜
あっ…わ、わかったよ!聞く!聞くから!
まったくみゆみゆには適わない

お昼休み、いつもの三人でお弁当を食べながら
みゆみゆのお兄ちゃん自慢を聞く
もうミミタコなんだけど、最近チョットみゆみゆのお兄ちゃんの話を
興味深げに聞いてる私が居る

「お兄ちゃんに撫でてもらうとね〜
もうなんかぽーっと幸せになるんだよ〜♪」


みゆみゆが得意げに語る
…アレなんだろう?
胸の奥が少しモヤモヤしてきた

「そんなに凄いの?、まるで魔法の手ね…
そこまでのモノならば一度経験してみたいわね」


竜胆がお茶をすすりながら相槌をうつ

「ふふ〜ん、そう簡単には…」

「…わ、私は一度あるよ」

みゆみゆの目が丸くなる
竜胆は飲みかけのお茶を少し噴出していた

「ちょっ?ど、どういうこと?」
「興味深い発言ねぇ…」
詰め寄ってくる二人


「えーつまりはこういうことなんだけど…」

私は少しうろたえながら、事の顛末を語りだした





少し前、みゆみゆが風邪で暫く休んだ時
かわりに取ってあげたノートを届けに行ったら
寝てるみゆみゆの変わりに、みゆみゆのお兄ちゃんが応対してくれたのだ
凄く優しそうな人だなって思える笑顔
今も仕事で忙しいご両親に代わり、みゆみゆの看病をしてたそうだ
色々困ってたみたいなので、チョットあがってお手伝い
なんだかんだで2時間くらい居たかな?
で、帰り際にさ靴を履こうと屈んだときに

「今日は本当に助かったよ
佐藤さんは、友達想いの良い子だね」


といって笑顔で私の頭をそっと撫でてきたんだ

思えば、私は父にも頭を撫でられた事なんか無かった
私は幼い頃から、背も高く、どっちかって言うと捻くれた子供だったので
撫でられる事など皆無だったし、正直そんなコトされたいと思っていなかった
でも…みゆみゆのお兄ちゃんに撫でられるのは…悪い感じはしない
凄くドキドキする

「あっ…ご、ごめん!…つ、つい深雪にするみたいに…
気分を悪くさせたらごめんね、佐藤さん大人っぽいのに
こんな子供みたいな扱いしちゃって…」


慌てて謝るみゆみゆのお兄ちゃん
なんだかとっても可愛らしい、胸がキュンとなる
顔が火照るのを感じる

「い、いえ!自分は全然構わないっす!
そ、それじゃ、お、おじゃましました!」

慌てて駆け出し、みゆみゆの家を後にした
なんかわからないけど、物凄く恥ずかしかったのだ





「〜って事で、魔法かはわかんないけど
たしかポーっとはなったかな?
でもホント優しそうなお兄ちゃんだよね〜みゆみ…」

話を終え、みゆみゆの方を見ると
なんていうか凄い顔でコッチを見てる
…?な、なんか悪い事言ったかな?
みゆみゆのお兄ちゃん褒めたと思うんだけど…
なんとも言えない雰囲気…重苦しい感じだ
そんななか竜胆が口を開いた

「ふふっ…なるほど……これは面白い
佐藤は…みゆみゆの兄様に恋をしたのね?」


えっ?ええっ?こ、こい?…恋!!!???

なにをトチ狂ったのか、さも悟りげに竜胆は瞳を閉じて茶を啜る

「ば、ばかっぜんぜんちがうよ!
おまえ人の話ちゃんときけよ!
そんなこと一言も言ってないだろ!」

慌てて否定する
しかしジト目のみゆみゆがくってかかってきた

「…よっちゃん私が寝てるのを良いことに
そんな…そんなすぺしゃるたいむを過ごしてたの!?
こ、この乳か!このでかいうしちちでお兄ちゃんをゆうわくかっ!
お、おにょれ…ぶるーたすおまえもなのかーーーーーーーー」


みゆみゆが訳の判らない事を叫ぶ
教室は大騒ぎだ

「わっ…だ、だからちがつって!
うわっあばれるなっぱ、ぱんつまるみえになってるぞ!
りっ竜胆!おいなんとかしろよ!」

ジタバタと暴れるみゆみゆを取り押さえつつ、竜胆に促す
元はといえばこいつが訳のわからんことを言うから…

「…ふむ…二人がそこまで好いてると言うみゆみゆの兄様
私も興味が湧いてきたな…」




「っなにぃーーーーーーーーーっ!!!」
私とみゆみゆの絶叫が教室に木霊した