去年の初夏の事

私は地元から遠く離れた辺鄙な海水浴場のある海岸近くの民宿に宿を取り
砂浜で走りこみに打ち込んでいた
未だメジャーではないが私は女子ボクシングの学生チャンピオンなのだ
山篭りならぬ海篭りというのだろうか
自主トレの為に、夏休みに独り黙々とトレーニングを積み重ねていた

海水浴シーズンに入っているのに、家族連れの姿等は
ほぼ皆無なこの海岸は走りこむのには向いていた
だがいかにも軽薄そうな男たちが時折やってきては
下卑た声をかける事には辟易していたのだが

そんな折、今まで遠巻きの声をかけてきていた男達の数人が
私の元にヘラヘラとした笑みを浮かべに声をかけてきたのだ

ナンパ男達に鍛えた様子も無く
軽く捻ってやるつもりだった
そうすれば懲りて、近寄ってこないだろうと
少し挑発的な言葉を使い、奴らの闘争本能に火をつける
私はあくまで正当防衛で無ければならない
先ずは奴等に手をださせて、それから懲らしめてやる
そう…思っていた



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